口腔リハビリテーション

ORALCARE

生活の質を向上させる
お口の機能を回復・維持するケア

病気や障害、加齢などによって、「噛む・飲み込む・話す」といったお口の機能は低下することがあります。
お口の機能が低下すると、食べられるものが限られるため、栄養の偏りやエネルギー不足が起こり、筋力や免疫力が低下しやすくなります。筋力が落ちると自然と運動不足になり、免疫力が下がると病気にかかりやすくなるため、お口の機能の状態は全身の健康に大きな影響を与えるといえます。
口腔リハビリテーションによって口唇・頬・舌の筋力を鍛えてお口の機能を回復させることで、食事や会話がしやすくなるだけでなく、患者さまのお口と体の健康づくりにも役立ちます。また、食事や会話の質が高まることは、患者さまの生活を豊かにすることにもつながります。
ご自身やご家族のお口の機能の低下が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。

口腔機能低下症について

口腔機能低下症とは、加齢や病気の影響などによって、お口の機能が複合的に低下する症状のことをいいます。
お口の機能には、大きく分けて「噛み砕く」「飲み込む」「発音する」「唾液を分泌する」「感覚」の5つがあります。
これらの機能が組み合わせることで、「食べる」「話す」という活動を正常に行うことができます。
放置しておくと食べる、話す、飲み込むというお口の機能を害してしまい、低栄養がフレイル(加齢により衰えた状態)を悪化させて全身の健康を損うことにつながります。

口腔機能低下症の症状

口腔機能低下症には以下の7つの症状があり、そのうち3つ以上該当する場合は、口腔機能低下症と診断されます。

① 口腔衛生状態不良

加齢などによって体の機能が衰えると、自力で口腔環境を整えることが難しくなります。口腔衛生状態不良とは、歯とお口のケアが充分にできていないなどの理由によってお口のなかで微生物が異常に増加した状態のことをいいます。お口の中の微生物が増加すると、唾液中の微生物数も増加し、それが誤嚥性肺炎や術後肺炎、術後感染、口腔内感染症などを引き起こすことがあります。

② 口腔乾燥

噛む力の低下や服用している薬の影響で唾液の分泌量が減り、お口のなかが乾燥している状態のこといいます。唾液はお口のなかを清潔に保つ役割があるため、口腔乾燥になると虫歯や歯周病、雑菌の繁殖による口臭を引き起こしやすくなります。

③ 咬合力低下

天然歯あるいは入れ歯(義歯)の上下の歯で、強く噛む力が低下した状態のことをいいます。噛み砕く能力や歯の残っている数や噛み合わせの安定性と関連が強く、顎の筋力の低下にも影響を受けます。

④ 舌口唇運動機能低下

全身疾患の影響や加齢などによって、脳・神経の機能や口腔周囲筋の機能が低下した結果、舌や口唇を動かす速度や細かな動作を行なう能力が低下した状態のことをいいます。舌や口唇の運動機能が低下すると、食事や栄養状態、発音、生活機能および 生活の質などに影響をおよぼす可能性があります。

⑤ 低舌圧

舌を動かす筋肉の慢性的な機能低下により、舌と口蓋(上あご)や舌と食物との間に発生する圧力が低下した状態のことをいいます。低舌圧が進行すると、食べ物を適切に噛み砕いて飲み込むことが難しくなるため、必要な栄養を摂取できなくなる可能性があります。そのため、放置すると全身の健康にも影響を与えるといわれています。

⑥ 咀嚼機能低下

加齢や健康状態、歯の喪失や口腔内環境の悪化により、食べこぼしや飲み込み際にむせ返りが起こることが多く、噛めない食品も徐々に増えていくと、食べられるものが減ることで、食欲が低下します。咀嚼機能低下は、この状態がさらに悪化した状態のことをいいます。咀嚼機能低下になると、噛み合わせの力や舌の運動能力が低下し、結果的に低栄養、代謝量低下を起こす可能性があります。

⑦ 嚥下機能低下

加齢などによって食べ物を飲み込む機能が低下した状態のことをいいます。食べ物をうまく飲み込めないと食事が取りづらくなるため、低栄養や脱水、食べ物が喉に詰まるといったことが起こる危険性があるほか、誤って食べ物が肺や気管に入り込むことで、高齢者の命を脅かす病気「誤嚥性肺炎」を引き起こす原因にもなります。

口腔機能低下症の検査

口腔機能低下症を診断するためには、口腔機能低下症の7つの症状について精密検査を行ないます。

① 口腔衛生状態不良の評価

評価指標であるTCI(Tongue Coating Index)を用いて、舌苔の付着程度により視診で評価します。舌苔とは、舌につく汚れのことで、細菌、唾液の成分、食べカスの集合体です。舌表面を9つの区域に分割し、各区域に対して舌苔の付着程度を3段階で評価し、合計スコアを算出します。TCI合計スコアが9点以上ならば口腔衛生状態不良と判定します。

② 口腔乾燥の評価

口腔乾燥は「口腔粘膜湿潤度」または「唾液量」で評価します。「口腔粘膜湿潤度」は、口腔水分計を使用して、舌の先端部から約10 mm後方の舌背中央部における口腔粘膜湿潤度を計測し、測定値27.0未満で口腔乾燥ありと判定します。 「唾液量」は、医療ガーゼを舌下部に置き、唾液をガーゼに浸み込ませることで計測します。2分間で重量増加が2g以下の場合を口腔乾燥ありと評価します。

③ 咬合力低下の評価

咬合力は「咬合圧検査」または「残存歯数」により評価します。「咬合圧検査」は、専用の感圧フィルムを用いて、上下の歯がもっとも安定して噛み合う位置にて3秒間全力で噛みしめた際の歯列全体の咬合力を計測します。咬合力が200N 未満を咬合力低下と判定します。「残存歯数」は、残存歯(現在残っている歯の本数)を数えます。歯根のみの歯と動揺度3の歯を除いて残存歯数が20本未満の場合を咬合力低下とします。なお、「咬合圧検査」と「残存歯数」では咬合圧検査の結果を優先します。

④ 舌口唇運動機能低下の評価

舌と口唇の細かな動作を行なう能力と運動速度を、オーラルディアドコキネシスという方法で評価します。「ぱ・た・か」と単音を10秒間できるだけ早く発音した際の発音回数を測定し、1秒当たりの発音回数が6回未満で運動機能低下と判定します。

⑤ 咀嚼機能低下の評価

咀嚼機能低下は、「咀嚼能力検査」または「咀嚼能率スコア法」により評価します。「咀嚼能力検査」は、検査用グミゼリーを2g を20 秒間自由に噛み砕いた後、10 mLの水で口をすすいでグミと水を「ろ過用メッシュ」内に吐き出し、メッシュを通過した溶液中に溶出されたグルコース濃度を咀嚼能力検査システムによって測定します。グルコース濃度が100 mg/dL未満の場合を咀嚼機能低下と評価します。 「咀嚼能率スコア法」は、検査用グミゼリーを30回噛み砕いた後に吐き出し、粉砕片を視覚資料と照合して評価する方法です。噛み砕いた後のグミゼリーの粉砕の程度が視覚資料のスコア 「0,1,2」 に相当する場合、咀嚼機能低下と評価します。

⑥ 嚥下機能低下の検査

嚥下機能低下は「嚥下スクリーニング検査」または「自記式質問票(聖隷式嚥下質問紙)」のいずれかの方法で評価します。 「嚥下スクリーニング検査」は、嚥下スクリーニング質問紙(The 10-item Eating Assessment Tool、EAT-10)を用いて評価します。合計点数が3点以上で嚥下機能低下と評価します。「自記式質問票(聖隷式嚥下質問紙)」は、自記式質問票「聖隷式嚥下質問紙」を用いて評価します。15項目のうちAの項目が3つ以上で嚥下機能低下と評価します。

⑦ 低舌圧の評価

低舌圧は舌圧測定により評価します。舌圧測定器のプローブをお口のなかに入れ、舌を数秒間全力で上に押し上げることで、最大舌圧を計測します。最大舌圧が30kPa未満で低舌圧と評価します。

口腔機能低下症の治療

口腔機能低下症を改善する治療では、以下のようなことを実施します。

管理計画の立案

口腔機能精密検査に基づき、患者さまの生活環境や生活習慣を踏まえて、患者さまに適した管理計画を作成します。口腔機能低下は、加齢や病気による全身状態の低下によっても起こりますが、虫歯や歯周病、歯の欠損、入れ歯の不適合などによっても起こります。また、口腔機能の低下することによって、お口の病気にかかる可能性もあります。そのため、口腔機能の管理は、お口の病気の治療および管理に合わせて計画を立てていきます。

全身の状態に合わせた口腔機能管理

患者さまの基礎疾患、服用薬剤、意識レベル、認知機能、肺炎の既往などを確認することで、口腔機能低下に影響をおよぼしている全身状態を把握し、その全身状態に適した口腔機能の管理を行なっていきます。また、食事の形態や食欲不振の有無なども確認し、口腔機能の状態や栄養状態についても把握します。食事の形態や栄養状態の改善のためには、口腔機能の低下が認められた項目に対して機能訓練を中心に管理を行ない、加えて口腔機能に適した食事の形態の選択や栄養の指導も行なっていきます。

口腔機能訓練の指導・動機づけ

口腔機能が低下していると診断された項目に対し、その症状や患者さまの特性に応じた口腔機能訓練の指導を患者さまに行ないます。口腔機能訓練には、咀嚼筋訓練、舌圧の向上の訓練、舌や可動域訓練、単音節の発音訓練などがあります。 口腔衛生状態不良の場合は、患者さまのみならずご家族や介助する方に対して清掃方法の指導を行ない、口腔内の衛生状態を保つことが全身の健康にとっても重要であることを継続的にご説明します。 また、口腔機能低下は栄養バランスの低下や、全身の筋力低下につながることもご説明したうえで、生活や栄養の指導なども行ないます。

患者さまへのご説明

患者さまの生活環境や生活習慣に応じた口腔機能低下症に関する適切な知識をご提供し、管理目的と管理方法について患者さまやご家族の方にご理解いただけるまでご説明します。 さまざまな原因が複合的に関わっておこる口腔機能低下の治療は、患者さまやご家族の日常生活の中での向き合い方が重要となります。そのため、口腔機能評価の結果や必要な訓練法だけでなく、その目標や治療によって得られるメリット、放置した場合のリスクを含めて充分にご説明することで、患者さまやご家族が治療に向きやいやすくなるように心がけます。

生活・栄養指導

患者さまの全身状態や生活環境・生活習慣を踏まえて、患者さまやご家族が日常生活の中でも実施可能な生活や栄養の指導を行ないます。 生活・栄養指導では、適切な口腔清掃指導、日々の食事において摂取することが望ましい食品や食形態の提案、食具や姿勢などの食事環境、食事方法についてアドバイスします。 また、口腔機能低下による全身状態の悪化を予防するために、適切な栄養摂取量や栄養バランスについてもご指導します。

〒114-0001
東京都北区東十条3‐9‐1 フラワーガーデン東十条102
京浜東北線「東十条駅」徒歩7分
南北線「王子神谷駅」徒歩5分

03-6915-4811

最終予約受付は診療終了の30分前

 
9:30-12:00
14:00-18:00
▲ 14:00-16:30 休診:木曜日 / 日曜日 / 祝日